インプラント
弱肉強食の世界では、歯の喪失は死に繋がります。人間の世界では、入れ歯(義歯)やブリッジといった歯の代用物が考案され、また食物の工夫もされたおかげで歯を失っても致命傷にはなりません。そのため、多少悪くなっても放置する傾向にあり、歯の喪失を早めるようなことになってしまいます。何歳になっても、好きなものを充分に噛んで食べたいとは誰もが思っていることでしょう。人間にとっても、歯は命を守る大切な器官です。
歯を失ってしまった方
人は永久歯を失うと、残念ながら二度と生え変わってきません。
そのため、今までは『義歯(入れ歯)』などを用いて食事や会話を取り戻すといった方法でしか、その部分を補う事はできませんでした。
しかし、『義歯(入れ歯)』だと固いものがうまく噛めない、発音がおかしい、また長く使っている間に合わなくなってガタガタいってきたりする場合があります。
このように、歯を失ってお悩みの方にご提供することができる、最新歯科医療の治療方法『インプラント治療(人口歯根)』です。
インプラントの仕組み
歯を削らなくてもよい方法、または入れ歯に代わる新しい治療法として、今最も注目されているのがこの「インプラント」と呼ばれる方法です。
歯科用のインプラントは、人工の材料を歯の根の代わりに顎に埋め込むもので、現在、国際的に広く認められているインプラントの学術名を「オッセオインテグレイティッド・インプラント」といわれています。
オッセオインテグレイティッドは「骨に結合された」、インプラントは「埋め込む」という意味で、つまり人工の材料=金属を顎の骨に強固に密着させる事によって、歯の根の働きを回復するもです。
最新でかつ安全な治療法です。
インプラント治療というのは、顎の骨に歯の根に代わる金属を埋め込むだけでなく、その金属を土台として天然の歯と同じような素材の人工歯を取り付ける治療法です。
インプラントを利用すると、口の中に固定された歯はいればとは異なってしっかりと固定されることになります。しっかりと固定されるので違和感無く、天然の自分の歯とほとんど同じ感覚で噛むことが出来ます。
インプラント治療というのは、天然の歯と同様の機能と見栄えを回復する高度な治療法なのです。
また、この治療法は1本の歯を失った場合でも、全部の歯を失った場合でも治療可能です。
インプラント治療によって、外見から見ただけではインプラントと天然歯の区別が付かないようにする事が出来ます。しかし、天然歯とインプラントは根本的に違うところがあるのです。
それは、天然の歯には、歯の根と骨の間に歯根膜(しこんまく)という薄い膜が存在している事です。
この歯根膜には、微妙な感覚を察知するセンサーのような働きがあり、その間隔を脳に伝えます。さらに歯根膜には歯にかかる力を和らげるクッションの役割を持っており、歯はわずかに動いています。
インプラントにはクッションの役割をする歯根膜がなく、動きません。また顎の骨と直接結合するため、微妙な感覚は伝わらないと考えられています。
しかし実際にインプラント治療を受けた人からは、感覚的には天然の歯と変わらないという感想が寄せられています。それは、口の中のいろいろなところにある感覚器官が巧妙に働き、インプラントにさわった感覚や食べ物を噛む感触が脳に伝えられているからだと考えられています。
歯科用インプラントの種類
歯科用インプラントは、材質、形状、埋入方法、人工歯の取り付け方など改良が加えられてきていて、様々なものが開発、実用化されています。
現在歯科用インプラントは世界中で数百種類使用されていると言われていますが、実際に日本でも数十種類のものが使用されています。
インプラント治療でより確実な結果を得るためには、品質の良いインプラント(インプラント体)ならびに関連部品を使用する必要があります。
純チタン・・・・・・骨との結合性が高く、現在主流となっています。
チタン合金・・・・・・純チタン同様、骨との結合性が高いです。
ニッケル・チタン合金・・・・・・チタンに比べてやや結合性には劣りますが、形状記憶の特性が有ります。
ハイドロキシアパタイト・・・・・・埋入後、早期に結合しますが、強度・加工面で難点があります。
1回法インプラント
外科手術でインプラント(インプラント体)埋入時に歯肉を貫通して頭出しをしておき、歯肉が治ってから上部構造(人工歯)を取り付ける方法です。
外科手術は1度で済むのですが、インプラント体が骨に確実に固定されるまでに、細菌感染症や余計な力がかかってしまう危険性があります。
2回法インプラント
外科手術でインプラント体を埋入し、歯肉で完全に封鎖します。
インプラント体が骨に固定される期間を待ってからその頭を出し、仮の歯を取り付けます。
そして歯肉が治ってから、最終的な上部構造(人工歯)を取り付けるという方法です。
インプラントの症例
○ ○ 歯を1本失った場合 ○ ○
インプラントを使用した治療では、両隣の歯を削ってはめ込むブリッジとは違い、隣の天然歯を削る事なく治療できるので天然の歯に負担をかける事がありません。 |
○ ○ 歯を数本失った場合 ○ ○
・上の奥歯を失った場合
上の奥歯の位置には骨が充分に無い事がありますが、骨がありインプラントが利用できると自分の歯と同じようななインプラントが出来ます。
・下の奥歯を失った場合
下の奥歯の喪失は比較的よくみられるものですが、一番奥の歯がなくなると固定式のブリッジ治療を行うことは出来ません。インプラント治療を利用すると、固定式の人工歯により回復が出来ます。 |
○ ○ 全ての歯を失った場合 ○ ○
上の顎ですべての歯を失うと、大きな床(しょう:入れ歯を支えるプラスチックや金属の土台)の付いた総入れ歯を入れなくてはいけません。しかし、インプラントをバランスよく埋入(まいにゅう:埋め込み)できれば、固定された人工の歯で自分の歯と同じように口の機能を回復する事が出来ます。
また、インプラントの埋入本数が少ない場合あるいは埋入本数が充分あっても、発音や審美性の点から、取り外し式(可撤式)の上部構造(人工歯)にした方が良い場合があります。取り外し式にしても、総入れ歯と違ってかなりしっかり固定されますし、入れ歯の床を小さくすることが出来るので気持ち悪さが解消されます。
なお、インプラントの場合、固定といっても歯科医院で外して清掃することが出来ます。また、取り外し式は入れ歯と同じようにご自宅で取り外し清掃することが出来ます。
インプラントの流れ
2回法手術を行う場合を例にあげてインプラントの流れをご説明します。
▼ 問診・触診・レントゲン写真・CT・歯牙歯列模型・口腔内写真。
↓
▼ 口腔内の清掃の徹底。
▼ 残存歯の治療(歯周治療、カリエス治療、咬合治療など)。
▼ 骨造成、上顎洞底挙上術(じょうがくどうていきょうじょうじゅつ)、顎堤増大術(がくていぞうだいじゅつ)など
(インプラント埋入と同時に行うこともあります)
↓
▼ 一次手術(インプラント埋入手術)
上顎 6ヶ月〜1年
下顎 2〜4ヶ月
※インプラント体の改良により、期間は短くなりつつあります。
▼ 二次手術(頭出し手術)、歯肉移植手術
▼ 仮補綴物装着
↓
▼ 抜歯
▼ 仮補綴物の修正
↓
▼ 印象採得(型どり)
約1週間
▼ 咬合採得(噛み合わせの記録)
約1〜2週間
▼ 試適
約1週間
▼ 装着
↓
1ヶ月経過後
2ヶ月経過後
3ヶ月経過後
※ メインテナンスの期間は患者さんの口腔内の状況や清掃状態によって異なります。
インプラントの費用
インプラント治療は保険に含まれません。すべて自費の治療となります。
治療には、手術前から術後のメインテナンスまで、骨の再生、インプラントの埋入、頭出し手術、歯肉移植、仮歯の製作、上部構造製作、装着など様々なステップがありますので、「インプラント1本いくら」と言いにくいところが有ります。
通常は、インプラント本体価格、埋入手術費用、頭出し手術費用、上部構造の費用を含めて、インプラントの治療費としているところが多いのですが、インプラント本体価格と埋入手術のみでインプラント1本の価格といっているところもあるようです。
また、患者さんの口腔内や、特に顎の骨の状態によっても変わりますし、使用するインプラントの種類によってもかかる費用は異なりますので、納得するまで歯科医の説明を受ける事をお勧めします。
さらに治療過程や治療後に何をどうしたいかなど、歯科医にまかせきりにしないで、レントゲン写真を見せてもらうなどして充分に説明を受けましょう。
費用は安いに越した事はありませんが、安くするために粗悪なインプラントであったり精度の悪い部品では困ります。
また、現在使用されているインプラントは各メーカー間の相換性がないものも多く有ります。長く使用している間にインプラント治療を受けた歯科医院に通えなくなる事も有ります。トラブルが発生したときに、どこのメーカーの製品か分からないと対処できない事もあります。そして、たとえ分かっていたとしても、部品が特殊なものは扱えない事もあります。
インプラント治療を受けたときには、どこのメーカーの製品を使いどのような方法で治療したかを確認し、記録しておく事が望まれます。
もっと詳しくインプラント
人工物を使用した歯科用骨内インプラントが臨床に応用されるようになったのは、1900年代の半ばからです。種々のインプラント材料、固定法が試みられましたが、1952年、チタンが骨に結合する事が分かり、その後、骨と結合様式や組織との親和性に関する研究と同時に臨床研究も進められ、オッセオインテグレイティッド(骨に結合された)・インプラントの確実性が証明されたのです。現在では、国際的にも広く臨床に受け入れられるようになりました。
日本では、オッセオインテグレイテッド・インプラントが導入されてから20年以上になります。正しく使用されればその安全性は確実なものとなってきています。
口腔内でいつも強い噛む力が加わり、清掃も難しく条件の悪い場所に使用されるインプラントですから、埋めれば一生そのまま使えるとは明言できません。
骨の性質は患者さんによっても違いますし、清掃の状況は患者さんの生活環境によっても変わります。
定期的なメインテナンスを約束しても途中で来院されなくなったり、あるいは通院困難な状態になるかもしれません。
一生もってほしいとは思いますが、残っている天然歯でも一生もつという保証はありません。一生もつといって歯科医がすすめてくるようでしたら、疑問を持ってください。
「インプラントは安心できる治療というか、否定的な歯科医がいるのはなぜ?」という疑問を受けます。何事においてもそうでしょうが、絶対というものはありません。長所と短所は必ず有ります。
インプラント治療もいいことばかりではありません。それらの短所をどうとらえるかによって評価は変わってきます。インプラント治療に否定的な歯科医の意見をまとめてみると、
| 1. |
オッセオインテグレイテッド・タイプのインプラントは約40年の経過であり、臨床応用にはまだ早い。 |
| 2. |
知識、技術の研修期間が不完全で、臨床医先行の危険性がある。 |
| 3. |
従来の治療法(ブリッジ、義歯など)で充分である。 |
| 4. |
営利重視の治療への反発。 |
などが主なものです。
インプラントの埋入手術は、歯を抜くときと同じように局所麻酔下で行われます。入院の心配もありませんし、手術後もすぐに帰宅できます。痛いのではないかと不安の強い方には、鎮静法で埋入手術を行うこともできますし、この場合でも入院の心配はなく手術後全身に及ぼす影響はありません。